実例医学知識6 ステロイド剤の過剰投与

1 ステロイドの主たる効能は,抗炎症作用と免疫抑制作用であり,前者は対症療法であり,病気そのものを治癒するものではないことに注意する必要がある。

 ステロイドの抗ショック作用を利用し,敗血症性ショックやARDS(急性肺障害)等の急性疾患の治療に用いられる場合もあるが,これらの疾患の原因を検索し,適応を厳密に判断する必要がある。

2 ステロイドは,感染症,骨粗鬆症,消化性潰瘍,血栓症(深部静脈血栓症を含む)等の多様かつ重大な副作用を有する。特に抗炎症作用・免疫抑制作用の結果,感染症を誘発するという重大な副作用を有し,かつ,感染症等の所見がマスクされ,感染等が見逃されやすくなるという問題がある。

3 ステロイドの量は,最も多く使用されているステロイド剤であるプレドニゾロン(PSL)に換算して表現する。

ステロイドの抗炎症作用は,PSL換算で数mg/日で著明にみられ,10mg(PSL)程度までは容量依存的に効果が増強するが,それ以上に増量しても追加的効果は見られず,副作用のみが増強する。1日20mgを超えると感染症のリスクが高まり,40mg以上では感染症の発症頻度がかなり高くなる。

ステロイドの抗炎症作用が効果を示す多くのリュウマチ性疾患でも,1日15mg程度以上に増量しても追加効果が期待できないとされている。

よって,抗炎症作用のみを期待して投与するのであれば,原則として,PSL換算で1日10~20mg程度に止めるべきであり,それ以上の大量投与は不適切である。

4 ステロイドを連日投与し,PSL換算で30mg以上を初期投与し,徐々に減少させる使用方法を大量療法としている。特に短期間に大量投与する方法は、パルス療法と呼ばれる。

適切な初期投与量は,対象疾患,使用目的,病態,患者の体重等によって異なるが,一般に,炎症性疾患ではPSL換算で10~30mg,免疫性疾患では30~60mg程度が適量とされる。

5 ステロイド療法に際しては,適応となる疾患を確実に診断した上,ステロイドが必要不可欠かどうか,禁忌となる疾患の合併がないかを十分検討し,個々の症例ごとに,必要量・十分量を適切な期間用いる必要がある。

医療事故の基礎知識

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