医療事故で多く見られる病名及び症状等のやさしい説明 1 呼吸・循環系

以下は、私が実際に経験した医療事故で多く見られた疾患や病状等の医学用語を、医療事故の理解に役立てるという観点から、ごく平易に説明したものです。医学的に正確でない部分があるので、裁判書面等に用いる場合は医学書でご確認下さい。

脱水・・・入院中の高齢者に高頻度で生じ、単純に水分が不足する場合だけでなく、Na(ナトリウム)やK(カリウム)濃度の異常など、体液バランスの欠如によっても生じる。進行すると、ショック、意識障害等が生じ、死に至る。

誤嚥性肺炎・・・気道から肺に入った食物、薬剤、血液等によって生じる肺炎の総称。無意識に微量ずつ誤嚥した唾液等によって生じる細菌性肺炎(不顕性の誤嚥性肺炎)は、高齢者の死因として非常に頻度が高く、医療事故事案でもしばしば登場する。

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)・・・肺炎、敗血症、薬剤、溺水、急性膵炎等の様々な原因で、肺の血管内の血液成分が肺胞内に漏出し、急速に呼吸不全が進行する病態の総称であり、原因である疾患の種類を問わない。

MRSA・・・抗生剤に耐性を持つ細菌の総称

SIRS(サーズ、全身性炎症反応症候群)、敗血症、ショック、DIC

・・・SIRSは、外傷、手術、感染症等、様々な身体への侵襲に対する免疫-炎症反応から生ずる非特異的な全身状態を示す臨床概念であり、重症患者のスクリーニングに用いる。平たく言えば、外部からの体内への侵襲に対し、身体の防御機能が激しく活動し、身体に負担がかかっている状態であり、体温、脈拍、呼吸機能、白血球数の異常によって判断される。医療事故においては、多くの場合、SIRSかどうかよりも、敗血症であるかどうかが問題となる。

以下の4項目のうち2項目以上を満たすときSIRSと診断する。①体温<36℃または>38℃。②脈拍>90回/分。③呼吸数>20回/分,あるいはPaCO2<32 Torr。④白血球数>12,000/mm3,あるいは<4,000/mm3,または10%を超える幼若球出現(日本救急医学会医学用語集から引用)

感染症によって生ずるSIRSを敗血症と呼ぶ。敗血症が進行すると、次に述べるショック、DIC、多臓器不全、ARDS等が生じ、致死的となる。敗血症は、医療事故であるかどかにかかわらず、人の死因として高頻度に見られるが、医療事故でも、敗血症を生じさせたこと又は敗血症の治療が遅れたことがしばしば問題となる。

ショック(循環動態不全)は、心臓が全身の血液循環を維持できなくなっている状態を指し、脱水、心臓疾患、感染症等の原因で生じるが、感染症による場合を敗血症性ショックと呼ぶ。ショックの症状として、頻脈、呼吸不全、冷汗、意識障害等が生じ、進行すると、多臓器不全となって死亡する。 敗血症は、医療事故の死因として最も頻度が高い。

DICは、血液の凝固機能の異常により、全身の血管内に血栓が生じるとともに、血小板等の血液の凝固系成分が消耗され、出血し易くなる病態であり、進行すると多臓器不全となり、死に至る。DICの三大原因は、がん、白血病、敗血症である。

カテーテル血流関連感染症(CRBSI)・・・人体に留置される各種のカテーテルは、体外から体内への細菌の移動経路となり、かつ、カテーテル表面に細菌が付着して、細菌の感染巣となりやすい。ここには、細菌が作ったバリアにより、抗生剤が効きにくいので、治療困難となる。カテーテルが原因で生じた感染症をカテーテル血流関連感染症と呼ぶ。特に大腿部への中心静脈カテーテルは、カテーテル血流関連感染症を生じ易いため、原則として、中心静脈カテーテルを大腿部に留置することはしない。

医療事故の基礎知識

PAGE
TOP