がん発見の遅れの医療事故

がん発見の遅れは、数多い医療事故のご相談の中で、最も多いジャンルです。

発見遅れのがんの種類として、私がこの10年間に2件以上ご相談を受けたものは次のとおりです。このうち、すい臓がんを除き、民事訴訟又は民事調停をした事案があります。

大腸がん、胃がん、乳がん、すい臓がん

上記のうち、大腸がんが圧倒的に多く、訴訟中の事案もあります。

これらの事案の難しさとして、大腸がんを筆頭に消化器系のがんは、自覚症状が乏しいため、発見遅れの責任を問いにくく、下痢や腹痛等の自覚症状が顕著になった時点では、末期状態であるため、見落としの過失は指摘出来ても、予後への影響が大きくなく、因果関係の立証が困難という問題があります。このような問題をクリアーし、訴訟前和解又は訴訟で解決できた事案は、治療可能な時期に腹部CT検査等の有効な検査を受けており、検査結果からがん疑いが指摘できるのに見落としていた場合と、事後的に判断して、確実にがんが発症していたと考えられる時期に、患者が医師に下痢や腹痛等を訴えて受診していたにもかかわらず、医師ががんの疑いを持たず、検査しなかった場合です。

大腸がんは、初期の自覚症状が乏しいとされますが、病状が進むと、下痢、腹部膨満、便の形状が細くなる、下血等の症状が現れます。私の経験では、患者が医師に重度の便秘と体重減少を訴えたのに対し、画像検査をしたが、医師はがんの疑いある所見を見落とし、さらなる精密検査をしないまま、普通の便秘と思い込んでいたとか、患者が繰り返す下痢を訴えたのに、医師が大腸がんを疑わず、必要な検査(大腸内視鏡検査、腹部CT検査)をしなかったため、治療が遅れたとかいう事案があります。

胃がんは、自覚症状が乏しい上、大腸内視鏡検査であれば早期発見が可能であるのに、昔ながらのバリウムを用いたエックス線検査では発見し難い場合があるにもかかわらず、集団検診において、未だにこの検査が行われているという、医療政策上の重大な問題があります。

乳がん事案は、比較的早期でも「しこり」という自覚症状があるのと、検査技術(マンモグラフィー、針生検等)が進歩したため、他のがんに比べると、証明し易い場合が多いです。

いずれの事案も、ポイントは、ポイントとなるCT画像やエコー等の検査結果の評価、検査手法の適切性、患者の過去の自覚症状の訴え(家族からのヒアリングを含め)の詳細な収集です。

医療事故の基礎知識

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